遺留分というのは、兄弟以外の法定相続人に認められた、相続財産に対する一定の取り分のことです。相続財産の処分は原則的に被相続人の自由な処分に委ねられていますが、法は遺留分権者の今後の生活や家族財産の公平な分配という観点から、両者のバランスを計っています。結果として被相続人は、遺留分に相当する部分については、この処分権に一定の制限が加えられることになります。
■遺留分の割合
相続人が直系尊属(父母・祖父母など)のみである場合には法定相続分の3分の1、それ以外であれば法定相続分の2分の1が遺留分となります。
例えば父が死亡し、妻と子2人(兄弟)がいる場合であれば、法定相続分は妻が2分の1、兄が4分の1、弟が4分の1となりますから、弟が有する遺留分は法定相続分4分の1のさらに2分の1つまり、相続財産全体の8分の1となります。
■胎児
胎児はいまだ生まれていませんが、法律上は生まれたものとして取扱われます(民法第886条)。したがって、被相続人である父の死亡時にまだ胎児であった被相続人の子は、その後に生きて生まれた場合には子の一人として遺留分を有します。
■注意点
遺留分は法定相続分と重複している部分が多いため混同されがちですが、注意しておくべき点は、「兄弟には遺留分がない」ということです。
子も両親もいない兄が、「妻に全ての財産を相続させる」と遺言したとしても、弟は遺留分減殺請求権を行使することはできないのです。
また、遺留分を侵害する処分行為(遺言・遺贈等)がなされたとしても、その処分行為は当然に無効となったり取り消されたりはしません。遺留分を有する者が、行使可能期間内に遺留分減殺請求権(民法第1031条)を行使する必要があります。
民法第1028条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、左の額を受ける。
1 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1
2 その他の場合には、被相続人の財産の2分の1