遺留分減殺請求権とは、遺留分を侵害する行為(被相続人のした遺贈や、一定範囲内の贈与)の効力を失わせることができる権利のことです。
遺留分減殺請求の対象となる行為については、民法1031条に「遺贈」および「贈与」と定められていますが、民法902条1項但書により、遺言による遺産分割方法の指定についても遺留分減殺請求の対象となるものと解されています。
たとえば父母と2人の子(兄弟)がいる場合において、父が死亡したあとで「全ての遺産は子(兄)に相続させる」旨の遺言が出てきたとします。
この場合、もう一人の子(弟)が有する遺留分は、法定相続分(4分の1)の2分の1ですから8分の1となります。そこで弟は、遺留分減殺請求権を行使することにより、自らの有する遺留分(相続財産全体の8分の1)の範囲内で、別途の手続きや裁判等を経ることなしに、この遺言の効力を失わせることができるのです。遺言の内容が、第三者に全ての遺産を遺贈する旨の内容だった場合も同様です。
遺留分減殺請求権の行使方法は、権利者から相手方に対して意思表示をするだけで足りますから、この点は相続放棄や遺留分の事前放棄などが裁判所を介して進める必要があることと異なっています。ただ意思表示だけで足りるとは言っても、後々のトラブルを避けるためには、日付や内容を明らかにしておくことが有効ですから、その意思表示は内容証明郵便を用いることが一般的です。
なお、遺留分減殺請求権には時効があります。遺留分を有する者が、相続の開始および減殺すべき贈与・遺贈等があったことを知った時から1年、または相続開始時から10年が経過すると、遺留分減殺請求権を行使できなくなってしまいますから注意してください。
◎民法第1031条
遺留分権利者およびその承継人は、遺留分を保全するに必要な限度で、遺贈及び前条に掲げる贈与の減殺を請求することができる。
◎民法第902条
1項 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。但し、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。