■事例
祖父-父(既に死亡)-子(兄)
-子(弟)<祖父と養子縁組>
祖父母と孫が養子縁組をするというケースは、比較的よく見られます。
父が早くに亡くなったため、子(弟)だけが祖父と養子縁組をしていた場合を想定してみます。このケースで祖父が亡くなった場合、2人の子(兄弟)の法定相続分はどうなるでしょうか。
子(弟)は祖父の養子ですから、祖父の子としての相続分を有するはずです。
またその一方、子(弟)は亡くなった父の子ですから、祖父が亡くなった際には代襲相続人として、父の相続分を代襲することができるように思えます。
このように相続人としての資格が重複している場合、重複した相続分のいずれかが優先されるのか、それとも両者を合算したものが子(弟)の相続分となるのかが問題となるのです。
■普通養子の場合
結論から言うと、子(弟)は「祖父の養子としての法定相続分」と、「亡くなった父を代襲相続する孫としての法定相続分」を合わせた相続分を有することになります。
上記の事例で言うと、祖父には父のほかに養子となった子(弟)という、2人の子がいたことになります。そこで、子(弟)の法定相続分は2分の1となり、残った2分の1を父の子である子(兄)(弟)が半分(4分の1)ずつ代襲相続します。
よって、子(弟)の法定相続分は、2分の1と4分の1を合算した4分の3ということになります。
養子制度には、後述するように特別養子縁組というものもありますが、社会一般で普通に養子と言った場合には、普通養子を指すことが多いかと思います。普通養子の場合、養親との親族関係が生じる一方、もとの両親との親族関係も消滅しないため、このように相続分の重複が起こりうるのです。
■特別養子の場合
養子といっても特別養子縁組の場合、法定相続分の重複は起こりません。
なぜなら特別養子縁組の場合は、もとの両親との親族関係が終了し、新しい養親との親族関係だけが残るからです。
上記事例の場合、子(弟)が祖父と特別養子縁組をしていた場合、父親との親子関係は終了しているため、子(弟)は祖父の子としての地位のみ有することになります。そこで、子(弟)の法定相続分は2分の1となります。