遺言を書くなんて、まだ早い?
自分の死について考えることなど、誰もができれば避けたいものでしょう。精力的に働いて資産を築き上げてきたような方であればなおさら、「まだまだこれからだ」「遺言なんて縁起の悪い」と考えがちではないでしょうか。
しかしながら、遺言がないため、せっかく築いた資産が親族間の争いを生む火種になってしまう可能性もないではありません。
“遺言”というものを、どうとらえるかは人それぞれです。ただ「死の直前に行う最後の確定的な遺志」という様な厳格なものではなく、あなたの現在の気持ちを率直に表現したものとして、もっと気軽に考えることも可能ではないかと思います。
遺言者の最終的な遺志を尊重するという趣旨から、遺言を撤回する権利は生前に放棄することのできないものとされており、遺言はいつでも、何ら理由もなく、訂正や撤回をすることができるのです。
一度作成した遺言を訂正・撤回しようとする場合、複数の方法があります。
もっとも、そもそも遺言というもの自体が、有効と認められるための厳格な形式を必要とするものですから(要式行為)、その訂正・撤回もまた法の定める方法によってなされなければなりません。
たとえば自筆証書遺言などについては、遺言書に直接加筆訂正することも認められていますが(民法968条)、複雑でミスの恐れもあるため、あまりお勧めできません。いっそのこと新たに遺言を作成して、古い遺言の内容を訂正するほうがよろしいでしょう。
新たな遺言を作成すると、以前作成された遺言の内容を訂正・撤回することができます(民法1022条)。この場合、遺言の形式自体は何でも構いません。つまり公正証書遺言を作ったあと、その内容を有効な自筆証書遺言によって訂正・撤回することも可能なわけです。
単に遺言を撤回したいだけなら、遺言書自体を破棄すればそれで撤回となります(民1024後段)が、新しい遺言によって古い遺言の内容を訂正した場合には、もちろん新しい遺言内容の方が有効となります。また明示の訂正・撤回がなくても、新旧の遺言について内容の抵触する部分があれば、その範囲で新しい遺言の記載が優先となるわけです。
このように、遺言は法に定められた複数の方法で訂正・撤回が可能ですから、とりあえず今の率直な気持ちをはっきりとした形で残しておいて、事情が変わった際に、また内容を変更すればよいのです。
当事務所では基本的に、安全確実な公正証書遺言をお勧めしております。証人の選考も不要で、さほど手間のかかるものでもありませんので、まずはご相談下さい。